初めて日本で公開された 1987 年からすでに 21 年。 当時の子どもたちも親の世代となった今、私たちを取巻く環境は果たして良くなったのだろうか。 核戦争の恐怖を描いた名作アニメーションが、 デジタルリマスターによる鮮やかな色彩で甦る!「さむがりやのサンタ」「スノーマン」で知られる世界的絵本作家、レイモンド・ブリッグズによる同名原作「風が吹くとき」は 1982 年に出版されるやイギリス国内で 50 万部のベストセラーとなり大きな反響を呼んだ。その原作をアニメ化した本作ではピンク・フロイドの ( 元 ) リーダー、ロジャー・ウォーターズが音楽を手掛け、主題歌をデビッド・ボウイが担当、更にはジェネシスなどの大物ミュージシャンが参加した。 1987 年公開当時チェルノブイリ原発事故翌年のヨーロッパでは、反核派と核擁護派の映画に対する反応も激しく、大きな注目を浴び、イギリスを始め各国で大ヒットを記録。日本では日本語版製作に大島渚監督、森繁久彌、加藤治子といった著名人が名を連ね、同年 1987 年に公開され、映画館だけではなく学校や公民館など日本全国様々な場所で上映された。政府の発表を一切疑わないまま死に至るジムとヒルダ。本編に映し出される老夫婦のたんたんとした日々はどことなくユーモラスである。それ故に、観客は日常と核戦争が現実に隣り合っているリアルな恐怖に改めて気付かされる。 初めて公開された 1987 年から 21 年経ち、当時の子どもたちが親の世代となっても、核戦争の恐怖は解消されるどころか、更に核兵器の殺傷能力は研究によって高められ、核保有国は増え続ける今日、この作品には、親子で考え、新しい世代に伝えていって欲しい大切なメッセージがある。タイトルはマザー・グースの歌に由来している。この歌は、思いあがった人や野心的な人に対する戒めの歌だと言われる。そしてラスト、ジムとヒルダは聖書の「詩篇 23 」を唱えるのだが、朦朧として突如テニソンの詩「軽奇兵の突撃」の断片に変わる。 1854 年にテニソンが発表したこの詩はクリミア戦争でイギリスの軽装備旅団 600 人が下された命令の愚かさを知りながらロシアの砲兵隊に突撃し全滅した悲劇を歌った詩である。風が吹いたら、揺りかごがゆれる。枝が折れたら、揺りかごが落ちる。坊やも揺りかごもみな落ちる(マザー・グースより)主は我を緑の野にふさせ、いこいの水際にともない給もう。たとえ我死の影の谷を歩むとも禍害をおそれなじ、なんじわれとともに存せばなり、なんじの鞭なんじの杖わが日々を慰む。(聖書「詩篇 23 」より)
※7/26(土)〜モーニングショー!